« あなたは誰ですか | トップページ | そろそろ »

2016/08/15

レストランでの出来事(昔話)

私がフランスで学生生活を送っていた頃のこと。
正確に言うと、留学時代のわりあいと最後のほうだったかと思います。

出来事その1。
そろそろ帰国を考えるようになった時期のこと、グルメな友人に誘われて、星付きレストランのランチを予約して出かけてきました。日本でも名の知られたロブションの系統の店で、あの伝説的なじゃがいものピュレというか、マッシュしただけのじゃがいもがどうしてこんなに美味いの! と思った記憶はいまでも鮮明。

たまたま、すぐとなりの席に日本人のグループがいらしていた。
観光旅行だったのかはさだかではありません。官僚とか大企業勤務かはたまたよいお家柄の大学教授か、というオーラを放った1、2名がもう少し旅慣れた、たどたどしいながらもなめらかなフランス語と英語のちゃんぽんで「ガイド」というか、ツアコンの役目を買って出たお仲間に連れられて、奥さま連れで有名レストランにやってきた、という風情。

私らが言葉に不自由していないのを見て取ると、上手に不慣れな様子をアピールしつつ、お店の給仕さんとのやりとりの助っ人をこちらがせざるを得ないようにともっていきました。や、スマートなやり口だったので、こちらも苦笑しながらも「たまたま同国のひとと一緒になったご縁なので」と、給仕さんと楽しくおしゃべりしていた、と記憶。

最後のところで、その方たちが「せっかくなのだから記念に」と、お店のメニューを人数分、持ち帰りたいとご所望しました。で、なぜそれを私が通訳しなくてはいけないのか、と、ちょこっと思いながらも、このとおりの「イヤとは言えない性格」なもので、給仕さんにやんわりとお願いしてみたわけです。

すると、すでにかなり仲良くオシャベリしてくれるようになった給仕さん、さすがのプロだと、いま思うのですが、こう答えてきました。

「あなたはとても素敵なお客様で、こちらもお話しすることができて今日は楽しかった。だから、あなたお一人に、こっそりとメニューをひとつ、お譲りすることはこちらとしても喜んでぜひ、なのだが、となりのテーブルのかたたちは、正直なところ、私にとって対応していて楽しいことが何もなかった。だから、あなたがどうしてもと言うなら、人数分のメニューをご用意します。でも、いつでもこういうお願いごとに応じると、彼らに思われたくはありません」

なるほど。
では一部だけ、あのかたたちに差しあげてくださいな。

そうお願いしたような気がする。

そして二つめの記憶。
たまたま日本で、某演奏家のファンである、という共通点がきっかけで知りあったひとが、新婚旅行でパリにやってきて、トゥールダルジャン(!)でのお昼にご招待してくれた。

ありがたや!
と思いまして、図々しくも出かけてきたわけです。
もちろん、その前後のパリ観光のガイドも喜んで勤めさせてもらったっけな。おお、いま思えば、私は「そういうのってイヤ」と言いつつ、それなりにパリのご縁でのツアコンみたいなこと、学生時代からけっこうやっていたではないか。

そして事件は起こった。
いや、表向き何かがあったというわけではないのよ。

こちらの新婚夫妻、気っ風はいいのだけれど、変なところで公共意識に乏しかったというか。前述の「メニューを欲しがったグループ客」よりも、タチの悪いことをやってくれました。

記念にと、トゥールダルジャンの(カトラリーとかでなくてまだマシだったというべき?)灰皿を、こっそりハンドバッグに忍ばせて持ち帰ってしまったのです。悪びれることなく「それくらいのお値段の食事を食べた客だもの、こっちは」と、そうも言っていたっけな。

バブルの時代の話です。
いまのお隣の国の富裕層のひとたちが、もしかするとよく似たことを各地で繰り返しているのかもしれません。

*****************************

なんでこんなことを書くかというと、いまになってまた、通訳仕事をたくさん引き受けるようになると、レベルの差こそあれ、こういうふうに「もらえるものはなんでももらう」という、そういうおかたを見かける機会も増えるんだよね。

で、そういうことをヌケヌケとやらかす人たちは、品は悪くとも、仕事がデキたり、お金を持っている(スポンサーになる)ことも、皆無ではない。つまり、私の立ち位置だったら、どういうふうにこういう人たちをスルーするのがよいのだろうか、と。

悩んでいる、というと大げさね。
世の中にはオモシロイ人がいくらでもおるなあ、って。

ちゃんちゃん。

|

« あなたは誰ですか | トップページ | そろそろ »

フランス」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/33613/64063803

この記事へのトラックバック一覧です: レストランでの出来事(昔話):

« あなたは誰ですか | トップページ | そろそろ »